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最高裁判所第三小法廷 昭和29年(あ)2549号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人両名の弁護人上村進同藤井英男の上告趣意について。

弗表示軍票は、米軍施設における交換の媒介物として米軍によって発行せられ、その流通が制限的であるとはいえ、なお日本国内に流通するというを妨げないから、刑法一四九条一項の「内国ニ流通スル外国ノ紙幣」に当るものと解するを相当とすることは、すでに当裁判所の判示したとおりである(昭和二六年(あ)二七三七号同二八年五月二五日第二小法廷決定、昭和二八年(あ)四五八三号同二九年一一月一一日第一小法廷決定参照)。それ故、この点に関し原判決の説示したところは正当であって、原判決には所論の違法はない。また、第一審において証拠とすることができた証拠は、控訴審においても、これを証拠とすることができるのであるから、原審が押収にかかる被告人ら作成の物品を同じく押収にかかる真正の軍票と対比して検したとしても、もとより違法ではなく、なお、原審が被告人ら作成の物品を検して、一般人をして真正のものと誤信させる程度のものと判断したことは、証拠の証明力につき裁判官の自由な判断に委ねられた範囲を逸脱したものとは認められないので、この点についても所論の違法はない。されば、原審に所論の違法があることを前提とする憲法三一条違反の論旨は理由がない。

また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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